「もう少しこのままで」から一歩先へ:現状維持バイアスと女性のライフキャリア
はじめに:ヒトは何故「変わりたくない」と思ってしまうのか
「このままでいいや」「もう少し様子を見よう」
そう思った経験はありませんか?
本当は変わりたい、でも変わるのは怖い。
そんな気持ちの裏側には心のブレーキとなる「現状維持バイアス」と呼ばれる心理があります。

このブログでは、「現状維持バイアス」の正体を解き明かし、変化にともなう心の動きを理解することで、前向きに人生を歩むヒントをお伝えします。
- 0.1. はじめに:ヒトは何故「変わりたくない」と思ってしまうのか
- 0.2. 現状維持バイアスとは?
- 0.3. 女性のライフキャリアに潜む現状維持バイアス
- 0.3.1.1. 妊娠、出産
- 0.3.1.2. 昇進・部署異動
- 0.3.1.3. パートナーの転勤や海外駐在によるキャリア中断
- 0.3.1.4. 健康や病気
- 0.4. 変化には“グリーフ”が伴う
- 0.5. 私の経験:ライフステージの変化+移住
- 0.6. 諸行無常、そして“Go with the flow”
- 0.7. 勇気をくれる一冊:「チーズはどこへ消えた?」
- 0.8. まとめ:変化を恐れず、一歩を踏み出そう
- 0.9. 次の一歩をサポートします
現状維持バイアスとは?
人には誰にでも「できるだけ今のままでいたい」という心理的な傾向があります。
これを「現状維持バイアス(Status quo bias)」と呼びます。
たとえ今の状況に不満があっても、「変わらない方が楽」と感じて、なかなか行動に移せないことがあります。
人は安心できる コンフォートゾーン にとどまろうとするからです。

将来的にメリットが明らかに見えていたとしても、変化には不安やリスクがつきまといます。結果として、慣れた状態を選んでしまうのです。
さらに、新しい選択をするには大きなエネルギーが必要なので、その負担を避けたくなるのもごく自然なことなのです。
女性のライフキャリアに潜む現状維持バイアス
私たちの人生には、さまざまな転機があります。
そのときに無意識のうちに「今のままでいい」と自分で自分を止めてしまっていることはありませんか?
例えば、こんな場面です。

妊娠、出産
「妊娠や出産をしたら生活が一変してしまうかも」と思うと、本当は望んでいるのに一歩踏み出せない。
昇進・部署異動
新しい挑戦に心が躍る一方で、「自分にはできない」と不安の方が大きくなり、チャンスを逃してしまう。
パートナーの転勤や海外駐在によるキャリア中断
自分のキャリアにモヤモヤを抱えながらも、「今の方が楽」と考えて行動に踏み出せない。
健康や病気
体調の異変や健康診断の要精密検査を前にしても、「知らない方が安心」と受診を先延ばししてしまう。
これらはいずれも、変化に伴う不安や負担を避けて「現状維持」を選ぼうとする心の動きの表れです。
変化には“グリーフ”が伴う
その状況が自分で心地よいと感じている環境であればあるほど、変化の際には強い「グリーフ(喪失体験)」を感じます。
グリーフとは、大切にしてきたものを失ったときに生じる自然な心の反応のことです。
一般的には「死別の悲しみ」として語られることが多いですが、転職や引っ越し、結婚・出産などのライフイベントでも生じます。これまでの自分や慣れ親しんだ日常との別れがあるためです。

グリーフにはいくつかの段階があります。
- 否認:「そんな変化は起きていない」と受け入れられない
- 怒り:「なぜ自分がこんな状況に」と苛立ちを感じる
- 葛藤・取引:「もしこうすれば元に戻れるのでは」と可能性を探る
- 抑うつ:失ったものの大きさを実感し、悲しみが押し寄せる
- 受容:「これが自分の新しい現実なんだ」と少しずつ前を向ける
重要なのは、グリーフは 悪いことではなく、変化を受け入れるための自然なプロセス であるということです。
感情の揺れや葛藤を経験することで、私たちは新しい状況に順応し、前に進む準備を整えることができるのです。
私の経験:ライフステージの変化+移住

実は、私自身も大きな変化のなかで迷ったことがありました。
私は10年間、日本の大学病院で医師として勤務し、35歳で留学しました。
最初は「1年だけの留学」のつもりだったのに、国際結婚をし、子どもを産み、そのままアメリカに移住することになったのです。
念願の子どもを授かれたことは本当に嬉しかったのですが、医師免許は国家資格です。
そのため「仕事はどうするんだろう」「本当は自分はどうありたいのか」と深いアイデンティティクライシスに直面しました。
けれど、少しずつ新しいキャリアを積み重ねていくなかで、「変化は怖いけれど、その先にしか出会えない景色がある」と実感しています。
まだまだ模索中ですが、だからこそ「変化を恐れずにやっていきたい」と思っています。
諸行無常、そして“Go with the flow”
仏教の言葉に 「諸行無常」 という考え方があります。
これは、「この世のすべてのものは常に変化し続ける」という意味です。私たちの生活や感情、環境、関係性さえも、永遠に同じ状態に留まることはありません。
良いことも、悪いことも、時間とともに移ろい、必ず変わっていくのです。
この考え方を日常に活かすと、変化を恐れるよりも 「流れに身を任せ、変化を楽しむ」 ことができるようになります。
英語でいう “Go with the flow” です。

変化に柔軟であることは、人生をより豊かにします。
そして実際、「運は“動”より生ずる」とも言われます。
つまり、動き出した人にだけ、新しい出会いやチャンスが訪れるのです。
恐れず一歩を踏み出すことで、思いもよらない可能性に出会える——それが、諸行無常の考え方が教えてくれる人生の智慧です。
勇気をくれる一冊:「チーズはどこへ消えた?」
皆さんは 『Who Moved My Cheese?』(邦題:『チーズはどこへ消えた?』) という本をご存じですか?
著者は スペンサー・ジョンソン(Spencer Johnson, M.D.)。
ビジネス書としても、人生の指針としても多くの人に読まれている小さな寓話です。

物語は、安定した場所にある「チーズ」に満足して暮らしていた登場人物たちが、ある日そのチーズが消えてしまったことから始まります。最初は戸惑い、恐れ、どうしてよいかわからなくなりますが、やがて「新しいチーズ」を探す勇気を持った者だけが、新しい未来を切り開いていきます。
私たちの人生も全く同じ!
チーズが消える=現状が変わるとき、怖くても一歩踏み出す勇気を持てるかどうかが、次の未来を決めていきます。
現状維持バイアスや変化への不安に悩むとき、この一冊は 「変化を受け入れ、前に進む勇気」 を与えてくれる指南書になります。
まとめ:変化を恐れず、一歩を踏み出そう
現状維持バイアスは誰にでもあります。
「このままの方が楽」と感じる気持ちは自然で、ごく当たり前の反応です。
でも、ほんの少し動くだけで、未来の景色は大きく変わります。
私自身もまた今、更なる転換期を迎えていると感じています。
正直に言うと、「このままの生活を続けた方が楽かもしれない」と思うこともあります。
それでも同時に、「怖さの先には、新しい可能性や出会いが必ずある」と強く実感しています。
もし今、モヤモヤや不安の中にいるなら、こう考えてみてください。
「変化を恐れず、流れに身を任せてみよう」

その一歩が、あなた自身の未来を切り開く力になります。
怖さを抱えながらも、少しずつ動き出すこと——それこそが、人生を豊かにする鍵なのです。
次の一歩をサポートします
もし今、キャリアや人生の選択に迷い、現状を変えたいけれど勇気が出ないと感じている方へ。
Life Career Planning
いつの間にか人生100年と言われる時代になったけれど女性にとって変わらない事実があります。 それは、妊娠・出産にリミットがあること。 どんどん仕事がおもしろくなる20代後半から30代前半のキャリア形成期はまさに妊娠・出産 […]
女性医師のためのライフキャリアコーチ
女性医師のためのライフキャリアコーチ 大学病院勤務・米国スタンフォード大学での研究留学を経てセカンドキャリア/ パラレルキャリアを歩む、Satokoからあなたへ、あなたにとって最適なLife & Careerを見 […]
これらのプログラムを通して、モヤモヤを言葉にし、未来に向けた具体的な一歩を一緒に見つけていきませんか?
変化を恐れる気持ちを抱えたままでも大丈夫。
その気持ちごと、次のステージへ進む力に変えていきましょう。