乳がんと診断された当日、やらなくていいこと
「先生に乳がんと言われた瞬間、頭が真っ白になって、それからのことは覚えていません。」
相談をくださった方の多くが、こう話されます。
それは決して特別なことではありません。
今この記事を読んでいるあなたも、もしかしたら乳がんと告知されたばかりかもしれません。
あるいは、大切な人が診断を受けて、何かしてあげたいと思っているのかもしれません。
私は放射線科医として、日本とアメリカの両方で乳がん診療に関わってきました。
そして今はオンラインで、診断直後の患者さんの相談を受けています。
その中で、いつも感じることがあります。
「告知当日に、やらなくていいことをしてしまって、余計に不安になっている方がとても多い」
ということです。
この記事では、乳がんと診断された当日に、無理にしなくていいことを整理してお伝えします。

まず知っておいてほしいこと
告知直後は「衝撃期」にあります
乳がんの告知を受けた直後、人は「衝撃期」と呼ばれる状態に入ります。
これは医学的にも知られている反応で、強いストレスによって、一時的に情報処理能力が低下している状態です。
そのため
・診察室での説明が頭に入らない
・家に帰ってから「何を聞いたっけ?」となる
・現実感がない
こうしたことが起こります。

でもそれは、理解力の問題ではありません。
脳が「ショック」に正常に反応しているだけです。
そしてもう一つ、知っておいてほしいことがあります。
多くの乳がんは
✔️数日で状況が大きく変わる病気ではありません
✔️告知当日に何かを決める必要はありません
焦りを感じるのは自然なことです。
でも、その焦りに従って動く必要はありません。
告知当日にやらなくていいこと
① インターネットで検索しすぎること
告知を受けたあと、多くの方が
「乳がん ステージ」
「乳がん 生存率」
「乳がん 抗がん剤」
と検索します。
これは不安を少しでも減らそうとする自然な反応です。
でも実際には、検索すればするほど不安が強くなることが多いのです。
「夜中の3時まで検索してしまって、怖い情報ばかり目に入ってしまいました。翌朝、知識は整理できていないのに、どっと疲れていて…」(40代女性)

インターネットの情報は断片的で、
あなたの状況(年齢、ステージ、サブタイプ、体の状態)に完全に一致していません。
特に
・闘病ブログ
・末期症例の記事
・生存率だけの情報
は、診断直後には不安を増やしてしまうことがあります。
情報は「量」ではなく「質」が大切です。
告知当日に検索するのは極力やめておきましょう。
② 治療を先回りして決めようとすること
「手術はどうしよう」
「抗がん剤は必要?」
「セカンドオピニオンは?」
こうした考えが浮かぶのも自然です。
でも告知当日の段階では、治療を決めるための情報はまだ揃っていないことがほとんどです。
乳がんの治療方針は
・病変の広がり
・サブタイプ
・リンパ節
・Ki-67
・遺伝子検査
など、複数の情報がそろって初めて決まります。
つまり今はパズルのピースがまだ揃っていない段階です。
わからない状態はとても落ち着きません。
でも、その不確かさに少し耐える時間も必要となってきます。
③ 人生の大きな決断をすること
診断直後に
「もう仕事は続けられない」
「保険を見直さなければ」
と考える方もいます。
でも、今日決めなくて大丈夫です。
今の乳がん治療は
・外来中心
・入院は短期間
のケースが多く、仕事を続けながら治療している方もたくさんいます。
「診断を受けた日に、上司に電話して休職すると伝えてしまいました。後から急がなくてよかったとわかって…」(50代女性)
このように、診断直後のショックの中で仕事を辞めたり休職を決めてしまうことを、最近では「びっくり離職」と呼ぶこともあります。
もちろん、そのときは本当に驚いていて、先のことが見えなくなってしまうものです。
でも、人生に関わる大きな決断は、もう少し情報が揃ってからでも遅くありません。
④ 自分を責めること
「検診をもっと早く受けていれば」
「ストレスが原因?」
「生活習慣のせい?」
そう思ってしまう方も多いです。

でも乳がんは、一つの原因で説明できる病気ではありません。
多くの要因が重なって起こります。
あなたのせいではありません。
どうか自分を責めすぎないでください。
では、告知当日にできること
実は"何もしなくていい"のです!!
むしろ私は、悲しみにしっかり浸ることをおすすめしています。
泣いてもいい。
怒ってもいい。
混乱してもいい。
大きな出来事が起きたとき、心はそれを受け止める時間が必要です。
私はよく
「まず3日くらいはしっかり悲しみましょう」
とお話しています。
その間は
・家事をしなくてもいい
・家族にすぐ話さなくてもいい
・仕事のことも考えなくていい
「今日ちょっとショックなことがあって、早めに休むね」
「体調が悪いから、今日は休みます」
それで十分です。

少し落ち着いてきたら
数日経って、少し気持ちが落ち着いてきたら
・外来で何を言われたか整理する
・次の診察で聞きたいことをまとめる
・信頼できる情報を集める
などを少しずつ始めていきましょう。
乳がんの診断から治療開始までには
ある程度の待機期間があります。
この期間に不安になる方はとても多いです。
でも、すぐにすべてを解決しなくていい。
乳がんには、標準治療という羅針盤があります。
そしてそれを一緒に考える医療者がいます。
診断直後で頭が整理できない方へ
診断直後は
「自分の状況がわからない」
「何を聞けばいいのかわからない」
「ネットの情報で余計に混乱している」
という状態になりやすいです。
私のオンライン相談では、例えばこんなことを整理しています。
・今考えるべきこと/まだ考えなくていいこと
・主治医への質問のまとめ方
・セカンドオピニオンが必要かどうか
・日本とアメリカの乳がん治療の考え方の違い
「相談するほどのことかどうかもわからない」
そんな段階でも大丈夫です。
診断直後は、誰でも頭の中が混乱しています。
一人で整理しようとしなくても大丈夫です。
必要なときに、あなたのペースでご相談ください。
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