千葉市母子保健研修会で「ペリネイタルロス」をテーマに講演いたしました
2026年6月10日、令和8年度千葉市母子保健研修事業(業務委託)第1回研修会にて、講師を務めさせていただきました。
テーマ:「ペリネイタルロスにどう寄り添うか −喪失を経験した医師と考える、グリーフケアとその先−」
当日は、千葉市助産師会会員の助産師約30名の皆さまに会場でご参加いただき、千葉市健康課の職員の皆さま(新生児訪問に従事する保健師・助産師など、常勤・非常勤あわせて約40名)には各保健センターからZoomでご受講いただきました。
あわせて後日の録画配信でも多くの方にご視聴いただき、約70名の母子保健の専門職の皆さまにお届けする機会となりました。

講演の背景
ペリネイタルロス(流産・死産・新生児死亡)は、決してまれな出来事ではありません。それにもかかわらず、当事者の悲しみは周囲から見えにくく、「公認されにくいグリーフ」とも言われます。
私自身、38歳のときに2回の稽留流産と子宮外妊娠を経験しました。当事者として直面したのは、「病院を出てからが戦い」という現実です。身体は診てもらえても、心は置き去りになってしまう−−。医療の内側にいる医師だからこそ、退院後のこの空白を埋める仕組みがないことを、はがゆく感じずにはいられませんでした。
そのはがゆさが原動力となり、私は数年にわたり、ペリネイタルロス経験者へのピアサポート活動を続けてきました。
同じ経験をした方々の声に耳を傾ける中で見えてきたのは、悲しみの形は一人ひとり違うこと、そして「話したい」と思えるタイミングで繋がれる場所があることの大切さです。
今回は、当事者・医師・ピアサポーターという3つの視点から、喪失後の心のありようと支援の現場でできることを、専門職の皆さまに向けてお話しいたしました。
講演の内容
当日は、次の流れでお話しいたしました。
- 私の経験をシェア
- グリーフケア
- プレコンセプションケア/リプロダクティブライツ
- 質疑応答
グリーフケアのパートでは、「グリーフ=行き場を失った愛」という捉え方を軸に、グリーフは異常ではなく自然な反応であること、段階的に治るものではなく波のように繰り返すことをお伝えしました。
そのうえで、支援の現場ですぐに活かしていただけるよう、次のような具体的なテーマを取り上げました。
- よかれと思って発せられる「傷つく言葉」(「流産はよくあることだから」「また次の子が生まれるよ」など)
- 「つらかったね」と勝手に過去形にすることの落とし穴
- 比較して安心して使える言葉と、ノンバーバルコミュニケーションの大切さ
- 支援者に求められる「控えめな誠実さ」−−沈黙を恐れない、気の利いたことを言おうとしない、決めつけない、何かを言うより聞く姿勢
- 支援者が「私も経験した」と打ち明けることのベネフィットとハーム
- 流産後に仕事を休むかどうか−−日本の制度の課題と、世界のペリネイタルロス休暇
- 病院を出たあとの「空白」を埋めるリーフレットやピアサポートグループという選択肢

後半では、グリーフケアの「その先」として、プレコンセプションケアとリプロダクティブライツについてもお話ししました。
私自身、37歳での第1子出産、38歳での流産・子宮外妊娠と、高齢出産や妊孕性のリミットという現実に、身をもって向き合ってきました。
年齢とともに妊娠率は下がり、流産率は上がる−−。この事実を知識としてだけでなく、喪失の当事者として知っている私だからこそお伝えできるプレコンセプションケアがあると考えており、以前、千葉市助産師会でもこのテーマでお話をさせていただきました。今回はその内容とも重ねながら、お話を展開しました。
大切にしているのは、プレコンセプションケアを「早く産みましょう」というメッセージにしないことです。産むにしろ、産まないにしろ、自分の健康と向き合い、未来の選択肢を守ること。そして、産むか産まないか、いつ産むかは、子宮を持っているその人自身が決めていいということ。
喪失に寄り添う支援と、これからの妊娠・出産を支える支援は、地続きであると考えています。
参加者からの声
研修後、たくさんの感想をお寄せいただきました。その一部を、要約してご紹介いたします。
「控えめな誠実さ」という言葉が心に残った。真摯に、謙虚に聞く姿勢を大切にしたい(助産師)
「何か気の利いたことを言わなければ」といつも焦っていたが、焦らなくてよいと知り、支援への不安が軽くなった(助産師)
給付金の窓口で流産・死産を経験された方と関わる機会が増えており、声のかけ方や心持ちがとても参考になった(保健師)
当事者の体験と講義がリンクしていて分かりやすかった。「グリーフ=行き場を失った愛」という捉え方が印象的だった(保健師)
ペリネイタルロスはどこかタブー視され、自分も「時が解決してくれるもの」と考えていた。悲しみをなかったことにするのではなく、経験を人生の一部として抱き、自分と向き合い人に相談することの大切さを学んだ。それが自己受容や自己肯定感、その後の自己成長につながることを知ることができた(助産師)
自身もペリネイタルロスの経験があり、当時の気持ちを思い出しながら聴いた。地域で継続されるケアが制度として根付いてほしい(助産師)
かける言葉に慎重になり、手を握り背中をさすることしかできなかったが、それでよかったのだと安心できた(助産師)
支援者の皆さま自身が、日々の現場で「どう声をかければよいのか」と真剣に悩んでいらっしゃること、そして中にはご自身も喪失を経験しながら支援にあたっている方がいらっしゃることを、あらためて実感する時間となりました。
おわりに−講演・研修のご依頼について
千葉市助産師会ならびに千葉市健康課の皆さま、このような貴重な機会をいただき、心より御礼申し上げます。
ペリネイタルロスは、産科・母子保健の現場だけでなく、職場、行政窓口、教育の場など、社会のあらゆる場面に関わるテーマです。私は「喪失を経験した医師」として、当事者の視点と医療者の視点の両方から、グリーフケア、ペリネイタルロス、プレコンセプションケア、女性の健康(乳がん・妊孕性)について、講演・研修・執筆のご依頼をお受けしております。
助産師会・行政・医療機関・企業・教育機関など、対象に合わせて内容を組み立てますので、どうぞお気軽にご相談ください。オンラインでの講演にも対応しております。
▶ ご依頼・お問い合わせは、ウェブサイトのContactページよりお願いいたします。

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オンラインでのピアサポートグループ
お腹の赤ちゃんを急に失った悲しみに寄り添い、心をケアする体制がまだまだ整っていません。
最近経験して気持ちの行き場がない方、かなり前に経験したけれど、消化できていない方。泣いたり、話したり、聞いたり、なんでもよし。
ご都合の合うタイミングで参加していただければ、と思います。

