放射線科医としての、医療を俯瞰(ふかん)する能力
私の専門分野は乳腺の画像診断、主に乳がんの画像診断です。
とはいっても、放射線科医は全身の画像診断ができなくては、日常診療もできませんし、専門医になることもできません。
例えば
胸痛や腹痛や片麻痺などの急性疾患
交通事故で救急車で運ばれてきた患者さん
がんと診断された方のステージング(がんがどれくらい広がっているか、転移はあるか、など)
がんで治療された方の治療効果判定(どれくらい小さくなっているか)
腰痛や肩、膝などの整形外科
など、書ききれないくらい、ありとあらゆる領域の画像診断をします。
その中で「ここの領域は興味があるなぁ」という分野で、学会発表や論文を書いたりして、深掘りしていく。
そんな感じです。
私はここ数年で、画像診断だけにとどまらず、女性特有の健康課題について発信をするようになりました。
元々医学生の頃から興味があったことなので、どんどん発信する場が増えて嬉しい限りなのですが
でも心のどこかで「お前、放射線科医だろ」と言われやしないかと気にしているところがありました(笑)。
この間、日本医学放射線学会総会に参加した際に
“放射線科医はあらゆる診療科に
横断的に関わっているので
医療を俯瞰的に見ることができる立場にある”
という、大会長のお言葉にかなり共感しました。
通常、診療科は縦割りで、乳腺外科はその領域のみ、産婦人科はその領域のみ。
他の科の領域のことはあまりわからない、というのが普通ですが
私は放射線科医であるからこそ、画像診断を通じて、いろんな科の診療に触れています。
診断をするためには、診療の流れや治療の知識が必要です。
それを知らないと、どのような情報を主治医が必要としているかがわからず、いいレポートが書けないためです。
また、治療効果判定においても、どのような治療をしているのかを知っている必要があるためです。
またA先生はA先生の患者さん、B先生はB先生の患者さん、C先生はC先生の患者さん、しか診ませんが
画像を撮っている限りは、私はA先生の患者さんもB先生の患者さんもC先生の患者さんも診ます。
先生によって、検査や治療に微妙な違いがあります。
また大学病院でなく、他の病院での画像診断もしますので、最新ではない医療の画像診断もすることがあります。
それらを反復して反復して10数年続けた結果、今の"医療を俯瞰できる能力"が身についているのだなぁ。
だから少し広めに考えた仕事ができるのだなぁと、ストンと落ちた気がしました。
まさに積み重ねの結果です!
せっかく放射線総会に参加したので、普段はあまり興味のない分野の教育講演もたくさん聴きました。
知識をつけていると、いろんな領域で、横断的にアドバイスすることができるので
引き続き勉強をしていこうと思った次第でした。