2023年2月16日Breast Awareness 乳腺放射線科医

乳がんの標準治療を選ぶ前に何が起こるの?

こんにちは!乳腺放射線科医のSatokoです!

私が日本で大学病院に勤務していた頃
毎週乳がんに関する、キャンサーボード: Cancer Boardというカンファレンスに出席していました。

キャンサーボードとは

手術、放射線療法および化学療法に携わる専門的な知識および技能を有する医師や、その他の専門医師および医療スタッフ等が参集 し、がん患者の症状、状態及び治療方針等を意見交換・共有・検討・確認等 するためのカンファレンスのことをいう。

厚生労働省より

乳腺外科医や放射線治療医、放射線診断医の私、腫瘍内科医やナースが出席し

珍しい症例、治療方針を相談したい症例や治療に難渋している症例を毎週3例ほど話し合っていました。


その中に、定期的に

乳がんを放置し、局所進行性乳がん(いわゆる花咲乳がん)の状態になってしまった症例があり

もう手術はできないけれど、痛みや、出血や滲出液、悪臭がひどく、日常生活がままならないので

「放射線科で動注化学療法はできないか?」

といった相談がありました。


また標準治療を選ばず、補完・代替療法を選んだ

にっちもさっちもいかない状態になり

最終的に病院を受診してきたパターンもよくありました。



加えて安全性が確立されていない特別な治療を選ぶ方もおり

その中にはものすごい量の重粒子線をあて、胸壁に穴が開いている方もいました。



まだ若く、世の中のことがわかっていない私は

なんでこんなことが起こるんだろう?

なんで標準治療を最初から選ばないんだろう?

と、不思議でなりませんでした。



月日は流れ、病院外で乳がんの患者さん、または家族の方とお話ししていると

「友人に代替療法をものすごく勧められた」というお話を伺ったり

また標準治療を選ばずに悪化した方から

「あの時、私に正しい知識があれば、あんな変な治療にあんなにお金をかけて悪くならなかったのに...」

というメッセージをいただいたこともありました。



これらは病院を受診する前に起こり

私たち医療者は

乳がんと診断され、パニックになっている時には何もしてあげられない。

病院に来た人に正しい治療を提供することはできるけれど

病院に来なかった人

または来るのをやめてしまった人には何もできないんだ

と、強く感じました。



次第にこの問題を引き起こしている一因には

主治医と患者さんの関係性やコミュニケーション不足や

知識のギャップ

もある、ということもわかりました。


また最近、正しい情報は難しくて、伝わりにくい

偽情報はインパクトがあり、印象に残りやすい

ということも知りました。


誰も手術して大切な乳房を失いたくないし

抗がん剤なんてしたくない。

できることなら避けたい。

そう思うのは当然のことです。


私は代替療法を頭ごなしに否定するつもりはありません。

標準治療にプラスする形で、あなたの症状が和らぐなら取り入れていいと思っています。


個人の考えは尊重されるべきではありますが

標準治療を頑張って終わらせた結果、再発なくお過ごしのたくさんの方

一方で、代替治療を選んで悪くなってきた方々もたくさんみてきたので

この問題について取り上げてみようと思います。


どうやって伝えていくのか?

これからじっくり考えていきたいです!

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