抗がん剤による脱毛を防ぐには?アメリカで使える頭皮冷却装置一覧
こんにちは!乳腺放射線科医のSatokoです。
このブログは、これからアメリカで抗がん剤治療を受ける予定の方に向けて書いています。
抗がん剤の副作用の中でも、多くの方が特に辛く感じるのが「脱毛」です。
「少しでも髪を残すためにできることはしたい」
そんな思いをサポートしてくれる方法のひとつが、頭皮冷却療法(Scalp Cooling)です。
今日は、その仕組みや種類、実際に使う際のポイントをご紹介します。
頭皮冷却療法とは?
頭皮冷却は、抗がん剤投与中に頭皮を冷やすことで血流を減らし、毛根に届く薬剤の量を減らす方法です。
【主なメリット】
- 脱毛を予防または軽減(平均50%程度まで減少)
- ウィッグ不要レベルに髪を保てるケースも多数
- 脱毛があっても、治療後の回復が早く、3か月以内に多くの方が自毛で過ごせる
- 髪が残ることで精神的なストレスが軽減し、治療への意欲や生活の質(QOL)が向上
臨床ガイドラインでも唯一の「脱毛予防策」として位置づけられ、エビデンスも蓄積されています。
抗がん剤の脱毛を減らす頭皮冷却装置
先週末に第30回日本乳癌学会が横浜で開催されました。 学会会場に行かずとも、 アメリカに住んでいる私も自宅からオンラインで参加でき、良い時代になったなぁと思います。 いろいろ学んだ事はあったのですが、1つシェアを。 抗が […]
アメリカで利用できる頭皮冷却装置の種類
1. 自動冷却装置(Automated Systems)
機械が一定の温度で自動的に頭皮を冷却してくれるタイプです。
日本でも導入施設が徐々に増えてきているようですが、アメリカで導入されている代表的なものは以下の2つ。
- DigniCap 全米の主要がん治療施設に導入。公式サイトのロケーションマップから設置病院を検索できます。
- Paxman FDA承認後、全米40州以上・400か所以上の医療施設で使用可能。MDアンダーソンやメイヨークリニックなど有名病院でも導入されています。

病院に導入されていない場合や費用が高額な場合は、次の手動型も検討できます。
2. 手動交換型(Manual Systems)
ご自身やご家族が、冷却済みキャップを一定時間ごとに交換し続けるタイプです。レンタル形式で、ご自宅から準備できます。
交換作業は少し大変ですが、その分費用を抑えられることもあります。
また家族や友人が手伝ってくれることで、治療の時間が「一緒に乗り越える時間」になり、絆が深まることもあります。
日本では患者さんが一人で抗がん剤治療を受けることが多いですが、アメリカでは半個室の治療室が多く、付き添いができるのが特徴です。

実は、私もPenguin Cold Capsの交換をお手伝いしたことがあります。
個別相談にいらした乳がん患者さんからその後ご依頼をいただき、初めての化学療法の日に付き添いながらサポートしました。
緊張や不安の中で、少しでも安心して治療を受けていただけるよう心を込めてお手伝いしました。




試してみる意義
頭皮冷却の効果は、抗がん剤の種類や体質によって異なります。
100%ではありませんが、多くの研究で「髪が少しでも残ることで精神的に救われた」という声が報告されています。
大切なのは、「ただ不安でいるのではなく、できることを試してみる」という前向きな姿勢です。それだけでも、気持ちがグッと楽になることがあります。
仲間と情報交換を
つらい抗がん剤治療を乗り越えるには、同じ経験をした仲間(ピア)のサポートが何より心強いものです。
英語ですが、頭皮冷却経験者が集まるFacebookグループがあります。
時には、私たち医療従事者も知らないような、治療を乗り切るためのリアルな「コツ」や「裏技」が共有されていることも。体験談や具体的なアドバイスを知ることで、治療前の不安が和らぎ、安心して準備を進められますよ。
治療後の髪の回復を早めるには?
治療終了後、髪の再生をサポートする方法のひとつとして、ヘアセラムがあります。
以前、こちらのものがいい、と乳がんサバイバーさんに教えていただきました。
・GRO Hair Serum (VEGAMOUR)
血行促進や毛髪の健康維持に役立つ成分が含まれ、再生スピードを高める可能性があります。
その他にも、NUTRASOLやMDHairの商品も医療現場や患者さんから高評価を受けているようです。
あなたの「chemo buddy(キモバディ)」に
「chemo buddy」とは、抗がん剤治療中の患者さんに付き添い、精神的・身体的サポートをする存在です。
以前、Penguin Cold Capsのお手伝いをした日の帰り際、患者さんがこうおっしゃいました。
「今日は人生で初めての抗がん剤治療で、本来なら悲しい日になるはずでした。でもSatoko先生が来てくださったおかげで、リラックスして受けられました。いろいろお話もできて、楽しい時間でした」
その言葉がとても嬉しく、今でも鮮明に思い出します。
そういった経緯もあり、サンフランシスコ・ベイエリアで、治療の付き添いや頭皮冷却のサポートも行っていこうと思っています。
もしアメリカで抗がん剤治療を控えていて、頭皮冷却を試してみたい方がいらっしゃいましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。

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