2025年7月24日Breast Awareness Information

アメリカで抗がん剤治療を乗り越えるために 〜暮らしの工夫と心のヒント〜

私のところには、在米日本人で乳がんと診断された方がご相談にいらっしゃいます。

その中で「抗がん剤を受けるべきかどうか、決めかねている」というお悩みもあります。

たとえば、こんなケース—

手術前はDCIS(非浸潤がん)と言われていたのに、術後の病理で浸潤がんとわかってショック...

オンコタイプDXの結果がスコア27。カットオフギリギリで微妙...

「抗がん剤をすることで10年生存率が5%上がる」と言われたが、副作用のつらさを思うと踏み切れない...


抗がん剤の効果はあるのだろうけれど、副作用が不安。どう決めたらいいのか迷ってしまう。

とてもよくわかる葛藤で、迷うのは自然なことです。


抗がん剤治療は、レジメにもよりますが、多くの場合半年近くかかり長期間の治療になります。

小さなお子さんがいたり、夫が出張続きだったり、頼れる人が近くにいなかったり……。

アメリカでは、子どもの送迎は必須で、留守番も法律で制限されているため、

「私が寝込んだら、家が回らない」

「日本の親も呼べないし、夫も多忙」

そんな状況で、「できることなら抗がん剤は避けたい」と思うのは当然のことです。



でも、ここで一つ大事なのは、短期的な視点ではなく、長期的な視点を持つこと

「今の不安」だけでなく「将来の安心」も視野に入れることです。

抗がん剤をしないで再発した場合、再発後には大抵の場合抗がん剤が必要になります。

再発すれば、死亡リスクが高まり、数年後には子どもや大切な人と一緒に入れなくなる可能性も。

「あの時、抗がん剤をやっていれば…」と、後悔しない選択はどちらなのか——。

この問いに自分なりの答えを出すことが大切です。

もちろん、抗がん剤をしても再発することはありますし、しなくても再発しない人もいます。

でも、今の段階では完全には予測できません。あるのは、これまでのデータの蓄積と、あなた自身の価値観です。

短期間で決断を迫られるからこそ、「自分にとっての価値観」を整理する

抗がん剤を受けるかどうかを考えるとき、まず大切なのは「自分にとって何が大事か」を整理することです。

ただし、治療のスケジュールはあまり待ってくれません。

もちろん、その場で即決する必要はありませんので、一度持ち帰って、冷静に考えることをおすすめします。



とはいえ、抗がん剤の有無を決めるのに、何ヶ月もかけて人生の棚卸しをしている時間はないでしょう。

でも、「私は何を優先したいのか?」という問いに、短時間でも向き合い、整理することは十分可能です。

そのサポートとして、意思決定を助けるためのワークシートをご用意しました。

今、迷いや不安の中にいる方は、ぜひダウンロードしてご活用ください。

もし抗がん剤を選ぶことになったら 〜生活の工夫と支援のヒント〜

・びびなびやNextdoorなどの掲示板を活用して、家事や育児を手伝ってくれる人を探す

・信頼できる友人やママ友に思い切って打ち明け、送り迎えや一時的な子守りをお願いする

ミールトレイン(Meal Train)で、食事のサポートをお願いする

  → ミールトレインとは、家族や友人・知人が交代で食事を届けてくれる仕組みです。友人や会社の同僚がやってくれることが多いですが、見ず知らずの人が助けてくれる場合もあります。


体調がすぐれないときは、ムリをせず外注に頼るのがいちばん。

Ready-to meal serviceを頼んだり

Uber Eats、DoorDash、Grubhubなどの食事デリバリーサービスを上手に活用しましょう。

和食が恋しくなったときのために、「Weee!」などで日系食材を事前に注文しておくのもおすすめです。

お弁当を届けてくれる和食系のデリバリーサービスも探しておくと、いざという時に助かります。

バナナや豆腐など、そのまま食べられるものを冷蔵庫にストックしておくのも◎。

元気な時に作り置きしておくのも一つの方法ですが、無理に作らなくても大丈夫。

できるときに、できることを。がんばりすぎない食生活を心がけてくださいね。

母親はどうしても、自分のことよりも子どものことを優先しがち。

特に日本では「食育」や「きちんとした生活」が重視されているので、

病気のときでも「ちゃんとしたご飯を食べさせなきゃ」と思ってしまうかもしれません。


でも、抗がん剤治療の数ヶ月間、たとえ子どもがジャンクフードばかり食べていたとしても、大丈夫です!

子どもは意外とたくましく、柔軟に順応してくれます(その方が好きだったりする)。

また、あなたが寝込んでいても、

部屋が散らかっていても、

洗濯物がたまっていても、

それは「悪い母親」だからではありません。

アメリカでは、お掃除を外注するのはごく普通のこと

部屋の乱れが気になるときは、クリーニングサービスに頼るのもひとつの手です。

完璧を目指さなくていいんです。

「できないこと」を責めず、「頼れるもの」を上手に使って、抗がん剤治療を乗り切ってください。

「日本に帰る」選択肢もあっていい

もしどうしてもアメリカでの治療が難しい場合は、

日本に一時帰国して、家族や友人にサポートを受けながら治療するという選択もあります。

「こうしなければいけない」と思い込まず、

自分にとってラクな道、安心できる道を選ぶことを大切にしてください。


最後に

私自身もアメリカ在住で、小さな子どもを育てながら生活しています。

アメリカで手術を受けた経験もあり、治療や育児の大変さ、不安、孤独……よくわかります。

・誰にも話せずにモヤモヤしている方

・家族と意見が合わず、辛い思いをされている方

どうか、ひとりで抱え込まずにご相談ください。

あなたの選択が「後悔のないもの」になるように、心から応援しています!

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