8月1日は異所性妊娠(子宮外妊娠)啓発デーです
英語で調べものをするようになり知ったことですが、たくさんの物事に対して啓発デーや啓発週間、月間が存在します。
医師として、経験者として、一般の方にも知識を持っておいてもらいたいと思った子宮外妊娠
なんと啓発デーが存在しました!
Ectopic Pregnancy Awareness Day(異所性妊娠啓発デー)は毎年8月1日と定められているのですが
全然知らなかった!!
医学用語は"異所性妊娠"なのですが、一般的には"子宮外妊娠"として知られている単語ですので、ここから子宮外妊娠と表現していきます。
私は3回めの妊娠が子宮外妊娠でした。
赤ちゃんが右卵管に着床してしまったため、妊娠6週目で2020年12月30日深夜に腹腔鏡下手術を受けることとなりました。
クリスマス前に妊娠したことはわかっていたのですが、アメリカの妊婦健診はスタートが遅いためまだ受診していない状態で
また数ヶ月前に流産をしたばかりだったので、お腹が少し痛くなってきた時に「また流産してしまうのかも...」とまず思いました。
でも少量の性器出血も始まったことで、受診を決意したわけですが
それには医師としてのゴリゴリに身についたセオリー
妊娠可能な年齢の女性の腹痛は、子宮外妊娠を必ず除外しないといけない
が頭にあったからです。
結局予想が当たり、子宮外妊娠と診断され、その日に準緊急手術となったわけです。
なぜ医師は「子宮外妊娠を見逃してはいけない」と頭に叩き込まれているのか?
それは場合によっては母体の命に関わる緊急疾患だからです。
卵管に着床し、知らずに赤ちゃんが成長した場合、卵管が破裂し、急激な腹痛や大出血を起こし、最悪の場合、お母さんが命を落とすことも。
死亡率は1/3000とされています。
また中には妊娠しているとまだ知らない女性が腹痛やショック状態で、ERに運び込まれてきた場合にも子宮外妊娠と診断される場合もあります。
そのため、妊娠可能な年齢の女性の腹痛では、必ず疑わないといけません。
子宮外妊娠の予防はできませんので、早期発見が重要となります。そのためにまず知っておくことがとても大切です。
異所性妊娠(子宮外妊娠)とは?
受精卵が、子宮内膜ではないところに着床する「異常妊娠」
・頻度は全妊娠の1-2%
・95%以上が卵管妊娠
症状
・下腹部痛(どちらかといえば、片側)
・性器出血
・(お腹のはり)
・(右肩の痛み)
※症状だけで初期流産との鑑別は難しい
どんな時に疑うの?
妊娠反応検査が陽性なのに、子宮内に胎嚢(赤ちゃんの袋)が確認できない場合
特に妊娠5週め以降(妊娠4週では確定できないことも)
急激な強い下腹部痛や大量の性器出血、意識を失ったりした場合はすぐに救急車を呼んでください!
リスクが上がる人
・過去に骨盤内炎症性疾患(クラミジア、淋菌)の既往がある人
・体外受精をした人
・過去に子宮外妊娠の既往がある人(再発率10%前後)
※原因がはっきりわからないことも多い
検査
・経膣超音波で胎嚢の位置を確認
・血液検査でhCG測定(妊娠何週めかわかる、流産かどうかわかる)
治療
・手術(通常、腹腔鏡下手術)
・薬物療法(メトトレキサートの筋注) 初期で条件がそろえば手術をしなくても済む
※残念ですが、妊娠継続はできません
注意事項
流産後に子宮外妊娠を経験した私が振り返って怖いなと思ったのは
お腹が痛くなった時にはやはり「また流産かな」と思ってしまうこと。
流産だった場合は、病院に行ってもしょうがない、ということもあり、受診を先延ばしにしてしまうことです。
また妊活中や不妊治療中の場合は、月経予定日が来るとソワソワして
どちらかといえば、早めに妊娠検査薬で妊娠しているかどうかチェックするでしょう。
しかし、月経が不順な方は妊娠したことにも気づきにくいし
うっかり妊娠、望まない妊娠だった場合は、妊娠検査薬をするのに勇気がいるし、遅れがち
またそれで妊娠検査陽性と出た後の産婦人科受診にも勇気がいります。
これをふまえてやはり大事だと思ったのが
- 月経周期を把握、記録しておく
- 月経が1週間以上遅れたら、妊娠検査薬で調べる
- 妊娠検査陽性となったら、早めに産婦人科を受診する
この3つを徹底した方がいいということ。
しかし、日本のように医療アクセスがよく、妊娠検査薬が陽性になったらすぐ産婦人科にかかることができる国ばかりとは限りません。
そのため、子宮外妊娠という疾患を知っておいてほしい。
・お腹が痛くなった時に妊娠しているかどうかまずチェックする
・妊娠していたら、子宮外妊娠の可能性がある、ということを思い出して、受診を先延ばしにしない
私が手遅れにならずに受診できたのは医学的知識に救われたところがあったので、子宮外妊娠の啓発活動も重要だなと感じました。
ピアサポートグループ
お腹を赤ちゃんを亡くした方へのピアサポートグループは
「流産、死産を経験された方へ」と書いてあることが多く
子宮外妊娠を経験した場合、参加してもいいか迷うこともあるかと思います。
なんとなく、仲間外れ感を感じてしまいます。
頻度が低いため、あまり周りに同じ経験をした人が見つけられないかもしれませんが
私は子宮外妊娠を経験した者です。
ご都合が合うときに、ピアサポート会にも参加してみてください。